古物商許可を取得する場合、「申請書」には営業所を記載しなければなりません。
この営業所は実際に古物の取引をする場所をいい、法人であれば店舗などを「営業所」として申請するのが一般的です。
最近では初期費用を抑えるたえめ、レンタルオフィスやバーチャルオフィスを「営業所」として申請することを考えている人も増えているようです。
では、レンタルオフィスやバーチャルオフィスを「営業所」として申請した場合、古物商許可を取得することが可能なのでしょうか。
結論から言ってしまうと、レンタルオフィスの場合は、状況によっては許可を取得することができる可能性があります。
ですが、バーチャルオフィスでは古物商許可の取得は不可能です。
今回はその理由などについて説明したいと思います。
目次
レンタルオフィスの場合
レンタルオフィスを営業所として申請した場合、古物商許可は、取得できる場合とできない場合があります。
レンタルオフィスとは、業務のために必要なスペース、デスクや機器など一式を貸し出すサービスのことをいいます。
都内だと相場は4万円から5万円前後とされ、初期投資を抑えてビジネスをスタートさせたい方に人気のサービスです。
レンタルオフィスで古物商許可が取得できるかどうかの重要なポイントは、営業所として独立性が認められるかどうかという点です。
広いフロアをパーティションなどで簡単に区切っただけのスペースや、短期間の契約などは、営業所として独立しているとはいえず、許可の取得は困難です。
ただ、申請窓口の担当警察官との交渉によっては、許可が取得できる可能性もあります。
このように、レンタルオフィスで古物商許可が取得できるかどうかの判断は、一般人には難しく、専門的な知識が必要です。
もし、レンタルオフィスを営業所として、古物商許可の申請を考えているのであれば、その前に一度、専門の行政書士に相談をするとよいでしょう。
バーチャルオフィスの場合
バーチャルオフィスを営業所として申請しても、古物商許可は取得できません。
バーチャルオフィスとは、法人登記などの利用目的で住所のみを貸し出すサービスのことをいいます。
最近では、電話転送サービスや受付窓口などを設置しているバーチャルオフィスもあるようですが、基本的には住所のみで実態はありません。
価格は非常に安く、都内の一等地であっても数千円で住所を借りることができます。
ですが、このバーチャルオフィスを「営業所」として申請しても古物商の許可を取得することはほぼ不可能です。
そもそも古物商の許可に「営業所」が必要とされる理由は、古物取引の中に盗品などが混ざった場合、すぐに警察が盗品を発見できるようにするためです。
そのため、「営業所」は警察が取引の流れを把握できるように、実態があるものでなければなりません。
ですが、バーチャルオフィスの場合、貸し出されるのは住所のみで、営業所としての実態が存在しません。
そのため、バーチャルオフィスでは警察が取引の流れを把握することができず、古物商許可の「営業所」としては認められないのです。
ネットなどを調べると「バーチャルオフィスでも古物商許可を取得できた」といったコメントを見かけることもありますが、嘘もしくはかなりグレーといえます。
2018年の古物営業法改正では、「簡易取消制度」が導入されました。
古物商人が所在不明と判断された場合、簡単に許可を取り消すことができる制度です。
なんとかバーチャルオフィスで古物商許可を取得できたとしても、営業所の実態が確認できず、所在不明と判断され許可を取り消される可能性もあります。
バーチャルオフィスを「営業所」として申請することは避けるべきです。
ネット取引でも営業所は必要
古物商許可の申請には、「営業所」の記載が必要です。
それはネットで古物取引をする場合であっても変わりません。
「営業所」というとリサイクルショップなどの実店舗をイメージする方が多いと思います。
そのため、ネットで仕入れてネットで転売するというビジネスを考えている方の中には、「営業所」はいらないんじゃないか、と思う方もいるようですが誤解です。
ネット取引しか行わない場合であっても、許可申請には必ず「営業所」の設置が必要です。
営業所の記載がない場合、申請書に不備があるとして、古物商許可は取得することができません。
専門家に相談する
レンタルオフィスやバーチャルオフィスを営業所として、古物商許可の取得を考えている方は、一度専門家に相談しましょう。
専門家に相談すれば古物商許可の取得が可能かどうか事前に調査してくれるので、申請をして断られるという無駄な手間をかける必要がありません。
また、レンタルオフィスの場合では、警察やオーナーとの交渉が古物商許可の取得ができるかどうか重要なポイントとなってきます。
そのため、自分で申請をした場合よりも、許可が取得できる可能性がぐっとあがります。
ここでいう専門家というのは、古物商許可を専門に扱っている行政書士のことをいいます。
行政書士の業務は幅広く、他分野の行政書士では、十分に対応出来ない可能性もあります。
古物商を専門に扱っているかどうかは、行政書士のホームページなどで紹介されているケースもあるのでチェックしましょう。
せっかく取得した許可が取り消される可能性も
古物営業法は2018年に改正され、「簡易取消制度」が導入されました。
「簡易取消制度」とは、古物商人が所在不明の場合、公安委員会が簡単に古物商の許可を取り消すことができるという制度です。
この制度は、許可証の悪用を防ぐという目的のために作られました。
そのため、レンタルオフィスやバーチャルオフィスを営業所として申請した場合、後から実態がなく所在不明と判断され、許可が取り消される可能性があるのです。
せっかく、大きな労力と長い時間をかけて古物商許可を取得できても、取り消されてしまっては意味がありません。
専門家に相談の上、適切な営業所を申請しましょう。
オフィスの広告に惑わされない
レンタルオフィスやバーチャルオフィスを紹介しているサイトの中には、あたかも古物商許可の取得ができるかのようなアピールをしているものもあります。
ですが、既に説明したとおりレンタルオフィスでは古物商許可の取得はケースバイケース、バーチャルオフィスではほぼ不可能です。
実際に古物商許可が取得できるかどうかの判断は専門的な知識が必要で、一般人が判断することは難しいのです。
レンタルオフィスやバーチャルオフィスで申請を考えている方は、事前に専門家に相談すべきです。
オフィスのオーナーが古物商許可の取得ができると言っても、安易にそれを信用しないようにしましょう。
レンタルオフィス・バーチャルオフィスで古物商許可は取得できる?まとめ
バーチャルオフィスを営業所として申請しても、古物商許可の取得はできません。
一方で、レンタルオフィスでは、場合によっては取得できる可能性もあります。
レンタルオフィスの場合、独立性をもっているかどうかが、古物商許可の申請において重要なポイントになります。
短期間の契約や、簡易的な仕切りしかないなどの場合は、独立性が認められず、古物商許可の取得は困難です。
ですが、古物商許可専門の行政書士に代行を依頼した場合、営業所として認められやすくなることがあります。
レンタルオフィスを営業所として古物商許可の取得を考えているのであれば、事前に行政書士に相談することがおすすめです。